♯146 神を使役する (オリジナル 雅)
戦場(いくさば)に立つと、どうしても恐怖を感じてしまうのですが、指令を実行しなければなりません。
まだ“敵軍”の姿は見えませんが、私の役割は先手を打って混乱させることなので、すぐ行動に移ります。
「赫鳥(かくちょう)、顕現せよ」
手持ちの八枚の式札から一枚を抜き取り、精一杯威圧的に告げると、度重なる交歓により懇意となった神の一体が姿を現しました。
燃えるような赤色の羽毛、翼を広げると八間にもなる巨大さで、戯れに人間を襲って肉を啄む獰猛な神です。
「……行け」
クェアアアアアアア!
甲高い鳴き声とともに翼をはばたかせて舞い上がると、敵軍に向かい一直線に飛翔しました。
敵とはいえ同じ人間で、彼らも背負う家族や祖国のために戦うのでしょう。その相手が異形の神々であることを思うと憐れではありますが、私たちも命がけなのです。
ここに留まっていると捕捉される可能性があります。次の一手を打つべく、ゆっくりと移動を開始しました。
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