♯21 「人形少女」 (オリジナル)
「………エトワール」
私が呼びかけると、彼女は振り返って微笑んだ。
朝の太陽の光を浴びている少女は生気に溢れ、夜通し犯され続けたようにはとても見えなかった。
醜く腫れ、血を流し続けた無数の傷跡はいつの間にか消え去り、肌は瑞々しくなめらかだった。
このような優しく、か弱く、純真な少女が、十数人の屈強な男たちを昏倒させたなどと誰が信じるだろう?
面白半分で彼女の身体を蹂躙し、散々に傷付けた連中は未だに目覚めることなく生死の境を彷徨っている。
昨夜の地下室の光景―床の上に折り重なるように倒れた男たちと、それをぼうっと眺める全身に白濁液を浴びた少女―が、どうしても頭から離れない。
いつまでも微笑み続けるエトワールから目を逸らし、私は覚悟を決めた。
もう一度、彼女を封印する。
本当は……殺す、いや、壊してしまうのが最良の方法なのだろうが、それだけはどうしても出来ない。
二十年近くに渡って孤独を癒してくれたこの“人形”を手にかけることは、私には絶対に無理だった。
|