♯36 他に誰もいない廊下にて
(オリジナル)

「あ…ご主人様」
「あれ?シルファ?」
 屋敷の隅の方にある狭い廊下で、僕はメイドのシルファと出くわした。
「…ちょうど良かったです。ご主人様にお願いしたいことが」
「な、何?」
「私を、実験台にして下さい」
「はぁぁ?」
 シルファの言うことは、いつも唐突だ。
 彼女はメイド服のポケットから懐中電灯のようなモノを取り出し、僕に手渡した。
「これは『透過ライト』と呼ばれるものです。特殊なコーティングを施した物体に対してこのライトの光を当てると、工学的に透過させることができます」
「う、うん」
「そして私は今、その特殊コーティングを施した服を着ています。ライトの光を当てることで本当に服が透過するかどうか、確認したいのです。私に向かって光を当ててください。ご主人様」
「うん、分かった」

(ええと、この光を当てると服が透過…つまり透けて見える…ってええええっ!?)
 僕は改めてライトとシルファを交互に見た。シルファは薄い笑いを浮かべている。
「ふふふ…私の身体なら、どこでも良いですよ?」
「じゃあ……」

 僕はライトをシルファの身体に向け、スイッチを押した。

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他に誰もいない廊下にて 胸を透過