今日も今日とてヒマを持て余した三妖精は、とある古道具屋に勝手に侵入して商品らしき物を物色していました。
スター「何この剣。錆びてるし刃こぼれしてるし。これじゃあ何にも切れないわね」
サニー「この箱、中に何か入ってるんだけど開かないよ」
ルナ「この本……知らない言葉で書かれてて全然読めない」
古道具屋には、面白いけども使えそうも無い品ばかりが置いてありました。
折角なので彼女たちはどれか一つを持って帰ることに決めたようです。
色々悩んだ挙句、選んだのはサニーが座っていた“開かない箱”でした。
開かない箱を持って帰った三妖精。
サニーは壊す気まんまんで斧を持ってきますが、スターとルナが待ったをかけました。
スター「もし中に入っているのが壊れ物だったらどうするの?とても残念なことになるわよ!」
ルナ「もし中に入っているのが生き物だったらどうするの?とても悲しいことになるわよ!」
サニー「じゃあどうすればいいのさ!?」
しばし悩んだ三妖精ですが、ルナが妙案を出しました。
ルナ「そうだ!私たちには無理でも、他の誰かなら何とかしてくれるかもしれない!」
スター「誰かって……誰のこと?」
ルナ「そうねぇ……前にお世話になったアリスさんなんてどうかなぁ?」
スター「それいいわね!早速行きましょう!」
サニー「うん!!」
早速箱を抱え、空を飛んでアリスの家……魔法の森に向かった三人でしたが、その途中で、
小傘「ばぁ!!」
三妖精「きゃわっ!!」
突然目の前に現れた妖怪に驚いて、箱を落としてしまったのでした。
スター「もう!何てことしてくれるのよ!」
小傘「さらばいばい〜〜〜〜」
妖怪はスタコラサッサと(?)逃げ出してしまいました。
ルナ「………どうしよう?」
箱が落ちた場所は森の中。上空からではどこにあるのか見当もつきません。
悩んだ末に、三人はとりあえずアリスの家に行くことにしたのでした。
アリス「…………で、肝心の箱も見つからないのに私のところにきたわけ?」
ルナ「……えぇ……まぁ…」
アリス「……はぁ、そんな不気味な箱を森の中に放置しておくわけにもいかないし……何とかしてみるわ。ただし!見つかったら中身の1/4は私のもの、いいわね!」
三妖精「は、はい!!」
というわけで、三妖精+アリスで森の中の箱探しが始まったのでした。
サニー「箱、箱〜」
アリス「はぁ……見つからないわねえ。人間でも迷う森の中で、どこに落ちたかも分からないものを探すのは大変だわ……」
スター「迷わす原因がここに揃ってますから、何とかなりますよ」
アリス「……ならないわよ」
アリスは、自身が操る人形も総動員して箱を探しますが、中々見つけることができません。
かなりの時間が経過し、太陽が西に傾き始めた頃…
サニー「あったーーーーー!!!」
サニーの大声が森の中に響きました。
皆がその場所に集まります。
箱は、草の上に鎮座していました。
壊れている様子もありません。
アリス「奇妙な箱ね。鍵穴も蝶番もない。隙間は完全に封じられている。嫌な予感がするわ」
三妖精「………」
アリス「さてと、どうしようかしら?ちなみに中身が割れ物だったら落下の衝撃ですでにコナゴナになってるわね。」
サニー「あうあう」
アリス「取りあえず、中身を透視してみましょうか……って言っても、人形を操る以外の魔法は得意じゃないの。あまり期待はしないでね」
アリスは箱に手をかざして、中身のスキャンを試みました。しかし……
アリス「??????中には黒くて、もやもやしていて、ふわふわしたものがいっぱい詰まっているわね。何これ??」
スター「…私たちに言われても……」
アリス「まぁ、これなら叩き壊しても問題なさそうね。他に開ける方法もなさそうだし、盛大にやってしまいましょう」
三妖精「は、はい!!」
アリス(はぁ……分け前は……期待できそうにないわね。)
アリスが人形を総動員して大きな岩を持ち上げ、箱に落下させると、バキィッ!!という嫌な音を立てて箱は壊れてしまったのでした。
そして、中にあった、というより、中から出てきたものは……
もくもくもくもくもく……
サニー「わあっ!!」
アリス「何?毒ガス?スモーク?」
灰色のもやもやは、まっすぐ空へと昇ると雨雲になり、ザァァァと滝のような大雨が降ってきたのでした。
スター「わぁぁ!濡れちゃう濡れちゃう〜〜」
スターを先頭に、三妖精とアリスは近くの木陰に避難しました。
大抵の妖精は雨が苦手なのです。
サニー「び、びっくりした〜。あの箱の中には雨雲が入っていたのかな?」
アリス「そうみたいね。だから簡単に開かないようになっていたんだわ。お手軽に雨乞いというわけね。時と場合によっては便利だけど……無意味な使い方をしちゃったわね」
スター「残念……」
コナゴナになった箱の破片の一つに、金属のプレートが付けられていました。
そこにはこう書かれていました。
“SPARE CLOUD(予備の雲)”
と………
おしまい