とれじゃーはんたーず! 第11話 そうだ、学校に行こう!

 サキとユーナの二人は、一つ屋根の下で暮らし、冒険ではパーティーを組んでいるが、性格や考え方が似ているというわけではない。
 これまでの重要な局面で何度か意見が食い違っているし、言い争ったこともある。
 そして、大きく考えが違っていることの一つが――将来の進路だ。
 サキはこれからもトレジャーハンターを続けたいと考えていて、いくつか他のパーティと繋がりを持っている。対してユーナは、将来的にはこの稼業から足を洗って、もっと安全で安定した仕事をしたいと思っていた。

ユーナ「はぁ…………って私、最近ため息ばかりついてない?!」

 いつものようにサキはギルドに出かけていて、ユーナは一人で留守番をしていた。
 ここ最近の二人の経済状況はかなり良いし、やっかいなクエストや依頼も抱えていない。テーブルの上には一枚の紙が置かれていたが、いつぞやの魔法都市のようなギルド発行の安っぽいビラでは無く、厚紙に箔押しという豪華な装丁がされていた。内容も不穏なものではなくて――

サキ「ただいまー……って何これ?パーティーの招待状?」
ユーナ「お、おかえりサキちゃん!えと、これはね……」

 ギルドから帰ってきたサキが何気なくテーブルの紙を手に取る。そこには大きな飾り文字で『体験入学のご案内』と書かれていた。

サキ「体験入学?いいんじゃない?ずっと学校通いたいって言ってたし。どーせ大したクエストも無いから行ってくれば。お金は何とかなるわ」

 お金に余裕があるのは、懇意にしている木こりからの依頼を解決したからであって、ギルド発行のクエストに良いものが無いのは相変わらずだ。しばらく仕事は開店休業だろう。

ユーナ「え、えっと、その…………二人で行かない?」
サキ「えぇえ!?私は学校に通うつもりはないし、二人分だとさすがに金額が厳しいんじゃない?」
ユーナ「この体験入学、基本タダなんだよ!制服も貸してくれるし、寮の空き部屋に無料で宿泊できるの。食費はかかるんだけど、サキちゃんって一人だと、その……」
サキ「あー……まぁ、飲み食いにお金使っちゃうのは否定できないわね……」

 サキは料理を全くできないので、普段の料理の担当はユーナになっている。サキがしばらくの間一人で暮らすことになると、食事は全て外食になるので……生活費が倍以上になってしまうだろう。

ユーナ「だからその……一緒に、どうかな……?」
サキ「そうね……面白そうだし、私も行ってみようかな」
ユーナ「やったぁ!じゃあ、手続きは私がやっておくね〜」
サキ「え?あ、う、うん、お願いするわね」

 妙に嬉しそうなユーナにサキは怪訝な表情になるが、内容を改めて確認したり、問いただしたりはしなかった。

おしまい

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