“ひぐらしのなく頃に”の感想ページです。
激しくネタバレです。ゲーム未プレイの方は引き返してください。
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“ひぐらしのなく頃に解”の解?!

『ひぐらしのなく頃に』『ひぐらしのなく頃に解』
メディア:windows CD-ROM
発行元:07th Expansion

 結局のところ、この長い物語で作者が描きたかったのは「心」だと思うのですよ。
 喜び、怒り、悲しみ、希望、絶望、信じること、疑心暗鬼、歪み、狂い、弱さ、強さ、恐怖、などなどの心の動きはもちろんのこと、心は脳が発する電気信号であり、脳は物質であり、物質である以上、他の物質、例えば麻薬とか、ホルモンとか、もしかすると寄生虫やウイルスの影響を受けることもありえるということ。
 これらを余すことなく書き切るために、8編数十時間もの時間が必要だったのでしょう、ええ、何回徹夜したことやら(笑)。

 この作品はあくまでノベルであり、選択肢は一つも存在せず、ゲームではないと思います。しかし、最初の方はプレイヤー投稿による犯人当てゲームの様相を呈していました。それゆえに、「皆殺し編」で真相が明らかになった際に、あまりにも突飛な真相に「なんじゃこりゃ〜」とか思った人も少なくなかったと思います。私もそうでした。とあるブログでは、「この作品は、ミステリーとしては邪道であり、犯人当てを煽るべきではなかった」とか書かれていました。
 ですが、「祭囃し編」を読めば分かるとおり、犯人当てゲームは、本当にやりたいことを包み込んで隠すオブラートの役割があったのではないかと思うのです。と同時に、登場人物と同様にプレイヤーにも疑心暗鬼に陥ってもらい、感情移入して楽しんでもらおうという意図もあったと思います。ですから、真相はプレイヤーの想像が絶対に及ばないような突拍子もない所にある必要があり、そのことによって「信じることの素晴らしさ」を際立たせたのではないでしょうか。
 ミステリーとしては失格かもしれませんが、ある意味、「皆殺し編」がスタートで、それ以前は序章と捉えることもできると思うのです。序章と本編のほんの一部だけ読んで、「この物語は失格だ」というのはあまりにもひどい解釈と言えるのではないでしょうか。

 さてさて、今回「祭囃し編」の冒頭にて、作者は「あなたの用意した解と、私の用意した解との、一騎打ちです」と言っていますね。では、ひひらいだーが用意していた「解」というのは……。
 ずばり、「鷹野三四を説得して終末作戦を思いとどまらせる」でした。うーむ、人間性が出てますねぇ。甘い甘い。
 でもですね。スタートした状況がもっと良ければ……巻き戻した時間が1ヶ月ぐらいあって、梨花と羽入が記憶を継承していれば……二人もこの手を使ったのではないかと思うのですよ。
 作者はこのエンドも最高ではないと言っています。敵を「東京」に設定すれば、結局同じことの繰り返し…とのことですが、部活メンバーが鷹野と共に「東京」も説得し、見事研究の無期延長を勝ち取ればいいの…かな…かな…?
 まぁ実際は、巻き戻したのは1週間、梨花は記憶を継承しない(これはびっくりしました)という悪条件でのスタートとなり、「48時間作戦」を使うことになるのですが。あの状況ではベストだったと思いますが、後にいくつか問題を残す結果になったのではないでしょうか。
 作者がやりたかったことは「羽入VS鷹野」だったんでしょうね。二人の出番の多さに対して、部活メンバーの出番が少ない!相当、羽入に思い入れがあったのでしょう。確かに可愛いです、羽入。まさか、オヤシロ様の制服姿が拝めるとは思いませんでした(笑)。この先、彼女は人間として生きていくのでしょう。近い将来、人間と神のハーフが生まれそうですね。うーんファンタジー(笑)。

 書きたいことも尽きてきましたが、物語ではっきりと語られなかったことに、ちょびっとだけ踏み込んでみたいと思います。
 「鷹野はどの時点で失敗していたのか」ということですが、物語では曖昧にしか言っていない上に、自暴自棄になった鷹野が「私なんて施設で死んでいればよかった」ととんでもないことを言っていたように記憶しているので、ここで私なりの答えを。
 「名声を得ることを目的とすることは、非常に危険である」
 名声が欲しいと思うことは悪いことではないです。私だって欲しい。でも、それを目的とすべきではないと思うのですよ。名声は、何かを成し遂げた結果として得られるものであって、到達点ではないはずです。到達点ではないものを目的とすれば、必ず見失う。どんなに名声が欲しくても、目的は別に設定すべきでしょう。
 ということで、鷹野が失敗したのは終末作戦を実行することを決めた段階だと思います。それまではまぁ、やり方の良し悪しはともかく、見失ってはいなかったはずです。皆さんはどう思われますか?



 最後に、
 『ひぐらしのなく頃に』は、読むのに費やした多大な時間に見合う何かを与えてくれた、素晴らしい作品でした。
 この作品に出会えたことを幸せに思います。

 これからも、このような素敵な作品に出会えることを祈りつつ……。

 
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