バスルーム

 怪しげなことこの上なかったが、やるだけやってみることにした。
 俺はユニットバスの浴槽にいっぱいの水を張り、アンプルを折って中の液体を流し込む。
 浴槽の水は、毒々しい紫色に染め上げられた。
 その中に人形を投入する。
 ぷくぷくと泡を出しながら、可愛らしい西洋人形は、あっさりとバスタブの底に沈んでいった。

 ……それからしばらく待ってみたが、特に何かが起こる様子もない。
(よく考えてみれば、こんなやり方で人間の大きさのダッチドールができるワケないよなぁ)
 人形を手にしたときの高揚感はすっかりしぼんでしまった。
 俺はユニットバスのドアを閉めて部屋に戻ってゲームを始めて……人形のことはすっかり忘れてしまったのだった。

 そして時間は過ぎて夜になった。

「……シャワーでも浴びるか」
 俺はぽつりとつぶやくとゲームを中断し、シャワーを浴びようとしてユニットバスのドアを開けた。

 すると……。

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