とれじゃーはんたーず! 第9話 無限回廊 2回目―ピンクの扉はエロスの香り―

ユーナ「はぁ……今週も赤字、かぁ……」

 残暑が和らいで過ごしやすくなった昼下がり、小ぢんまりとした質素な借家の一室で、小さくため息をつきながらユーナは呟いた。
 テーブルの上には家計簿のノートが開かれている。赤色で記入されたマイナスの数字が目立っていた。残りわずかな貯金が、少しずつ減っているということだ。
 サキは一人でギルドにクエストを探しに行っている。最近毎日チェックしているので時間はそんなにかからないから、もうすぐ戻ってくるだろう。

サキ「ただいま〜」
ユーナ「あ、おかえり〜。……どうだった?」
サキ「ダメダメ、全然なかったわ。来週もバイトするしかないわね」
ユーナ「そっか〜」

 ここ最近手頃なクエストが全く無いので、かろうじてバイトで生計を立てている。
 食うに困っているわけではないが、一攫千金を狙ってトレジャーハンターになったのに、バイトに明け暮れているのでは意味が無い。
 ユーナは仕方ないといった感じだが、サキは不満だった。

サキ「ねぇ、明日アレに行かない?」
ユーナ「また行くの!?もう無くなっちゃってると思うけどなぁ……」

無限回廊
 サキの言った“アレ”とは、「無限回廊」と呼ばれる遺跡の入り口のことだ。
 二人は一度この遺跡にチャレンジし、お宝を持ち帰ったことがある。
 中にはまだお宝が残っている……はずなので、再度チャレンジする価値はあるし、お宝が無かったとしても、内部をきちんと探索して報告すればギルドから報奨金が出るはずだ。

 しかし、どういうわけか入り口は忽然と無くなっていた。
 二人が以前に発見した場所は草原の中で、周囲から浮いていて非常に目立っていたはずなのだが、再訪した際にどうしても見つけることが出来なかった。
 それ以来、ヒマだったり仕事が無い時に時折この草原を探しているのだが、未だに痕跡すら見つかっていない。

ユーナ「ま、いいか。気晴らしにピクニックということで。お弁当準備しておくね」
サキ「よろしくー」

 謎めいた遺跡の探索は「どうせ今回も見つからないだろう」ということで、ピクニックに出かける口実になっていたのだった。

 そして翌日――お弁当に飲み物、レジャーシート等々、ピクニックの準備をバッチリ整えて丘へとやって来たのだが、二人はそこで異様な光景を目にして呆然と立ちすくんだ。

いりぐち

サキ「あった……!」
ユーナ「う、うそ……」

 何度探しても見つからなかったはずの遺跡の入り口が、まるでずっとそこにあったかのように、しれっと二人の前に存在していた。

ユーナ「う〜ん……でも、どことなく前とちがうような……」
サキ「いやいや、“入り口しかない”のは同じだけど、形が全然違うじゃない。馬鹿にされている気がするわ。てか、見たことない様式だけど、コレって入り口で合ってるの?」
ユーナ「東方の建築様式で、部屋を仕切る“フスマ”か“ショウジ”だと思う」
サキ「なるほど……見た感じノブも取っ手も無いみたいだけど、どうやって開けるのかしら」
ユーナ「あの丸い窪みを使って、パネルみたいなのを横にスライドさせる……だったかな」
サキ「ふむふむ。で……開けるのよね?よね?」
ユーナ「うぅ……「入り口が見つかったら入ってみる」って決めてたから……それでいいよ……」
サキ「よーし!ロックもトラップも無さそうだから、景気よく開けるわよー!!」

スパーーーーン!!

 サキが躊躇なく中央のパネル2枚を豪快にスライドして入り口を開けると、中は以前に訪れた時と大体同じ感じの小部屋になっていた。

小部屋
サキ「あー……」
ユーナ「うわぁ……」

 小部屋の様子を見た二人は、苦虫(小さめ)を噛み潰したような微妙な表情になる。
 黒,ピンク,白の3つの扉が並んでいるのは前回と変わっていない。けれど、白の扉には大きく×印が付けられ、ピンクの扉には「女性歓迎」のメッセージが新たに書き加えられていた。

 もし、入り口を開けた先が全く同じ状況だったら、前回と同じく白の扉を開けるつもりだった。
 そうすれば何が起こるか分かっているので対応しやすい。……物語としてはちっとも面白くないが。

ユーナ「白の扉、開ける?」
サキ「いやー、それは無いでしょ。ユーナだってそう思うわよね?」
ユーナ「うん、まぁ……」

 ×印が付けられてはいるけど、白の扉は開くかもしれない。しかし、問題はそこではない。
 サキとユーナの過去の行動が遺跡に認識されていて、同じ選択をすることが全力で拒否されている。
 とりあえず止めておくのが無難だろう。うん、そうに違いない。

サキ「となると、ピンクか黒ね。もしくは引き返すってテもあるわ。……どれがいいと思う?」
ユーナ「う〜〜〜ん」

 珍しくサキがユーナに振ると、ユーナは考え込む。
 冒頭に書いたように、二人の経済状況は最悪なので、引き返すことはしたくない。
 サキもユーナも“女性”だから、ピンクの扉に入れば歓迎されることになるが、露骨な誘導に従うのは不安だ。
 となると、残るのは黒の扉になるが……この扉には何故か凄まじい恐怖を感じていた。
 どれも選びたくない、というのが正直な気持ちだった。

ユーナ「……ピンクの扉、かなぁ……」
サキ「よし、じゃあピンクに決定!」
ユーナ「え?私が選んだので決まりなの?」
サキ「私はどれでもいいと思ってたから、ユーナが選んだのにすれば、二人で選んだことになるでしょ」
ユーナ「うぅ……自信なくなってきた……」
サキ「さあ!開けるわよ!」

ガチャ…………ぶしゅぅぅぅぅ!!

 サキがピンクの扉を開けた途端に、ひどく下品な音とともにピンク色の霧が噴き出してきた。

サキ「うわーー!」
ユーナ「きゃぁぁ!」

 サキは慌てて扉を閉めようとしたが、その時には扉そのものが消失していた。
 ピンクの霧はどんどん濃くなって、周囲の状況が分からなくなる。

 しばらくして霧が晴れると、二人は見たことのない場所に立っていたのだった。

ユーナ「どこ……ここ……?」
サキ「また別の世界だか空間だかに飛ばされたわね」

 サキとユーナが居る場所から一本の細い道が伸びていて、小高い丘へと続いている。
 道の両側は鬱蒼とした森になっている。森の中は濃密なピンクの霧で満たされていた。

サキ「この道をたどって、丘の方に行けってことかしら?」
ユーナ「サキちゃん、あっちに立て札があるよ!」

 ユーナが指さした方に、木の枝に板を打ち付けた簡素な立て札があった。

立て札
サキ「なるほど、これがこの世界の“ルール”なわけね」
ユーナ「内容は分かりやすいけど……説明の仕方が、雑……」

 立て札の右下に“ヌケ・サーク”のラクガキが描かれている。面倒なので直接現れて説明するつもりはないということか。
 “赤い石”に触れると戻れる、というのは前回と同じだった。「丘の頂上を目指すべし」と書かれているということは、丘の頂上に赤い石があるということだろうか。
 そして、サキにとって(多分この物語を読んでいる貴方にとっても☆)こんなルールの説明なんてどうでもよくなるほどインパクトのあることが、その次に書かれていた。

サキ(霧が濃くなると、エッチなイベント?!
ユーナ「↓の白い石って……これかな?死んじゃうのなら、そっとしておいた方がいいね。……ってサキちゃん、どうしたの?」

エッチなイベント(妄想)
サキ「え?べ、別に、何でもないわよ?」
ユーナ「……嘘。その顔は、何か変なこと考えてる」
サキ「そんなことないってば!!」
ユーナ「じ〜〜……」
サキ「……………………」
ユーナ「…………まぁ、サキちゃんが言いたくないなら別にいいけど。早く行こ?こんな場所、長居したくないよ」
サキ「え、ええ!そうね!!」

 二人は気を取り直すと、丘の頂上へと伸びる道を歩き始めた。
 普通に歩けば30分程度の距離だが、道中には数々の(卑猥な)障害が待ち受けているはずだ。そう簡単に目的地に到着できるとは思えなかった。
 そして予想通りに、行く手を阻むものが早速二人の前に現れた。

サキ「これは……沼?」
ユーナ「道が途切れちゃったね……。方向はこっちで合ってるから、沼を迂回する?」

 サキもユーナも荷物を持っているし、武器を装備しているし、もちろん服を着ている。わざわざ沼に入って直進する理由は無い。ユーナが言った通り、普通の状況なら迂回するのが正しい。……普通の状況なら。

サキ「いやー、そんな簡単じゃなさそうよ。沼の周り、霧が濃いわ」

 沼を迂回することは出来そうだが、状況が分からないほどの濃密なピンクの霧に、悪い予感しかしない。

ユーナ「……霧が濃くなるとエッチなイベント、だっけ……」
サキ「うひひ、森に入った途端に大勢のヌケ・サークに囲まれて、身ぐるみ剥がされて輪姦されるんだわ」
ユーナ「そんなの嫌〜〜っ!」

 もしそんなイベントが発生したら18禁どころかKidleで出版できるかもあやしくなる。ということで、二人には何とかして沼を渡って頂きたい。

ユーナ「あ、あれ何?」

 沼のほとりにあった奇妙なものに、ユーナが気づいた。
 二本の木の枝にロープが渡してあり、4枚の布切れ――に見える何かがロープにくくりつけらていた。

サキ「これってもしかして……水着?」
ユーナ「ええっ!?これ水着なの??」

エッチな水着
 三角形の小さな布地を細い紐でつないだそれは、ユーナには全く水着に見えなかった。水着の布面積が小さいことを知ってはいたが、コレはそもそも人間が身に着ける形をしていない。

ユーナ「こんなのどうやって着れば……ってサキちゃん!?」
サキ「えっと、ここで紐をしばって、で、こっちはこうすれば……」

 ユーナが“あぶない水着”に当惑している間に、サキはさっさと服を脱いで着替えを始めていた。

サキ「はい完了!さぁ!ユーナも着替えるのよ!」
ユーナ「ち、ちょっとサキちゃん!自分でやるから……い、いやぁぁぁぁぁ!!」

 ……ヌケ・サークではなく、サキに身ぐるみ剥がされるユーナであった。

 水着に着替えて沼に入る準備はしたものの、問題が一つあった。脱いだ服や荷物、装備品をどうするか、だ。
 向こう岸まで運ぶ方法を考えなければならないが、まずはどこか一ヶ所にまとめたい。

ユーナ「あ、脱いだ服とか、取りあえずここに置けばいいみたいだね」

 おあつらえむきな綺麗で平らな岩が見つかり、親切にも「着替え置き場」と書かれてあったので、ユーナはそこに移動させたのだが――

サキ「ちょっと、ユーナ!そんなあからさまに怪しい場所に置いちゃだめ!」
ユーナ「……え?」

 サキに呼ばれてユーナが目を離した一瞬の間に、服も荷物も全て消失していた。

ユーナ「…………うそ……」
サキ「あっちゃぁ〜」
ユーナ「ど、どうしようどうしようどうしよう!?」
サキ「ちょ、ちょっと落ち着いて。まず周囲を探すわよ」

 二人は周囲を隈なく調べたが、何一つ見つからなかった。

ユーナ「うぅぅぅ〜どうしよう〜戻ったら滅茶苦茶怒られる〜」
サキ「はぁ……仕方ないわ。良くも悪くも荷物の問題は片付いたし、沼を泳いで渡りましょ」

 不幸中の幸いだったのは、サキもユーナも水着に着替えた後にナイフを装備していたので、丸腰になるのは避けられたことだった。
 ちなみに、サキの剣は高価だけど普通に売られているので、同じ物を買い直せば問題ないが、ユーナの杖はギルドから貸与されているものなので、紛失すると厳しく叱責されることになる。

 さて、ハプニングから立ち直った(ユーナは微妙だが……)二人は、まず水の中を確認することにした。
 沼の水は、底が見えるぐらいに澄んでいた。周囲に毒々しいピンクの霧が立ち込めていなければ、それなりに良い景観だったろう。
 サキが足先を水に入れてみたが、特に異常はない。強酸や強アルカリということもなさそうだ。

サキ「問題はなさそうだけど、泳いでる時になるべく水を口に入れない方がいいわね」
ユーナ「うん、気を付ける」

 サキがまず沼に入り、安全を確認した後でユーナが入り、二人は泳ぎ始めた。
 そして、特に何事もなく向こう岸に到着した。
 ユーナがまず水から上がり、そしてサキも上がろうとした時……

脱げた水着
ユーナ「わぁぁぁ!サキちゃん!岸に上がっちゃダメ!水着脱げてる!裸になってるよ!!」
サキ「ん?……あらら。まぁ誰もいないし別に気にしないわ。ていうか、ユーナも素っ裸になってるけど?」
ユーナ「え!?……きゃぁぁぁ!!」

 サキもユーナも、泳いでいる途中で水着が脱げたことに全然気づいていなかった。水着は回収された底に沈んだのか、二人が沼を見渡しても、見つけることは出来なかった。

ユーナ「あんなにしっかり縛ったのに、どうして脱げちゃったんだろ……?」
サキ「なーんか質感が怪しかったのよね、妙にスベスベしてて。どんなにきつく縛っても、簡単にほどけるようになってたんだわ」

 防御力皆無の水着を失っても、戦闘には影響しないのだが、やはり全裸だと不安を掻き立てられる。
 それでも、二人は進むしかなかった。
 鬱蒼とした木々とピンクの霧に挟まれた道を、慎重にゆっくりと歩いてゆく。周囲を警戒するのは当然として、裸足なので、地面も注視せざるを得ない。
 再び視界が開けた時、二人の前には異様な光景が広がった。

サキ「あ、あれって……」
ユーナ「スライム!?めちゃくちゃ大きい!!」

 薄暗くジメっとした場所を好むはずのスライムが、広場の真ん中に鎮座していた。しかも、あり得ないほど巨大だ。直径は20メートル、高さ(厚さ?)は2メートルぐらいだろうか。
 二人はナイフを抜いて臨戦態勢を取るが、スライムに刃物の攻撃は通用しない。ユーナの火炎魔法は効果的だが、手元に杖が無いと威力が大幅に低下する。この状況で戦うのは不利だ。

ユーナ「サキちゃん、これはさすがに……迂回した方がよくない?」
サキ「ユーナの言うとおりだと思うけど、そうもいかないみたいよ」

 サキは広場の中央を指さした。蠢くスライムに囲まれて、木で組まれた櫓のようなものがある。そして、その上に置かれていたのは――

ユーナ「あれは……私たちの荷物!!」

 沼を泳いで渡る前に消失した服や荷物、そして武器だった。
 罠の可能性は大いにあるが、無視するわけにもいかない。二人は用心深く巨大スライムに近づいていった。

サキ「……襲ってこないわね」
ユーナ「私たちに気づいてないのかなぁ」

 スライムには、地面の微妙な振動から獲物を感知し、即座に攻撃を仕掛けてくる習性がある。しかし、二人が接近して様子を見ていても、何の反応も無い。
 もしかしたら、このプルプルしたゲル状の物体は、スライムという魔物ではないのかも――という甘い考えが、ユーナの頭をよぎる。その一瞬の油断が、彼女の命取りになった。

取り込まれるユーナ
シュルルルルッ!!

ユーナ「え?……ひゃぁぁああっ!!」

 スライムの表面から一本の触手が伸び、ユーナの足首に巻き付くと、すさまじい力で引っ張る。
 それを皮切りに、多数の触手が生えて、次々とユーナに襲いかかった!!

ユーナ「い、いやああああああっ!!!」

 ユーナは触手に全身を縛られて身動きできないままズルズルと引きずられ、スライムの中へ取り込まれてゆく!

サキ「ユーナ!!!!」

 サキはユーナを救出するべく、ナイフを構えて猛ダッシュする。
 襲ってくる触手を正確にナイフで攻撃するが、ヒットしても全くダメージを与えられない。
 ユーナの元に到達する前に、サキも触手に絡まれ、スライムの内部へと取り込まれてしまった!

取り込まれるサキ
サキ「んぅ……ち、ちょっと……そんなとこ揉まないで……ゃ……んっ!」

 サキは何とかしてスライムの中から脱出しようとするが、蠢きながら全身を愛撫するいやらしい動きに逆らうことができない。
 特にその大きく柔らかい乳房は、執拗に揉まれて刺激され続けた。

サキ(粘液で溶かされたり、締め上げて骨を折られたり、ってことはなさそう、だけど……)

 獲物を消化するのではなく性的に弄ぶだけのスライム、ということだった(自慢の特注品なのだ!)。だけど、全く危険が無いというわけではない。穴(どこの穴かはあえて語らない)から触手が体内に侵入しようとしていて、まさに貞操の危機が迫っていた。
 しかも、スライムの厚さはサキの身長を超えているので、沈まないように必死でもがいて頭を出さないと窒息してしまう。

サキ「はぁ……はぁ……ユーナ、大丈夫?……何とか、櫓の方に……んっ……移動するのよ!」
ユーナ「うん、分かってる……やぁん!」

 時折変な声を出しつつも、二人はスライムの中をじりじりと進む。櫓までは数メートルの距離なのだが、とてもとても長く感じられた。
 濃いピンクの霧で方向を見失いそうだったが、どうにかサキに続いてユーナも櫓に到着し、木組みを掴んで上に登った。

ユーナ「うぅぅぅ!絶対許さない!ファイアーストームで燃やし尽くしてやる!!!」
サキ「ちょっと!ユーナ落ち着いて!私たちまで焼け死んじゃう!」

 キレたユーナは杖を握るなり火炎魔法でスライムを全力攻撃しようとするが、サキに制止される。スライムに取り囲まれているうえに木の櫓の上に居るので、ファイアーストームで周辺一帯を燃やし尽くしたら、逃げ場をなくして自分たちも焼け死んでしまう。
 とはいえ、下の方からスライムが触手を次々と伸ばしている。のんびりと策を練る余裕はなさそうだった。

サキ「もうちょっと威力の低いやつを、沼の方に撃って」
ユーナ「え?逆方向じゃないの?」
サキ「こんな粘液でベタベタの身体に、服を着るなんて嫌よ。沼で水浴びしたいわ」
ユーナ「それいいね!じゃあ…………『炎よ!走れ!』」

 ユーナの火炎魔法『火走り』が発動し、地面に炎の筋が刻まれて燃え上がる。
 その場所のスライムが、ぶしゅぶしゅと水煙を上げて溶けていった。
 サキは脱出のタイミングを計りながら、こっそりと荷物の中から小型たいまつを取り出し、火を点けた。

サキ「よし、今よ!」
ユーナ「うん!」

 サキとユーナは、焼け爛れたスライムの一部を踏みつけながら、沼に向かってダッシュする。
 スライムが大きな一匹の個体なら、これだけの炎のダメージを受ければ瀕死のはずなのだが、着火しなかった部位は猛然と二人に襲いかかってきた!

サキ(なーるほど、小さなスライムの群体、というわけね)

 走りながら、サキはニヤリと小さく笑う。
 触手が届くよりも早く、二人はスライムの包囲網から脱出した。

ユーナ「はぁ……はぁ……サキちゃん、スライム、追撃してくるかも……!」
サキ「大丈夫よ。…………そろそろ、かな?」

 サキが呟いた途端、櫓が炎に包まれた!

サキ「脱出する前に、櫓に火を点けておいたの♪」
ユーナ「サキちゃん、さっすがぁ!」
サキ「うひひ、私たちにあんなことをした報いを受けるといいわ」

 群体の中心から突如発生した炎に、スライムたちはパニックに陥った。二人を追撃するどころではない。
 ……中心の櫓を守るよう設定しておいたのが裏目に出たか……。

サキ「さ、沼で水浴びして着替えて……ちょっと休憩しましょ」
ユーナ「うん、仮眠して魔力も回復させたいな」
サキ「そういえば、お弁当持ってきてたわよね」
ユーナ「あるよ!お腹も空いたし、ランチにしようか(笑)」

 というわけで、沼のほとりで、炎に焼かれるスライムを眺めながらのランチタイム&お昼寝となった。
 凌辱イベントは残念ながら終了だ。女の子の恨み、おそるべし…………。

 しばしの休息の後、櫓の火災に巻き込まれて元の1/10ぐらいの大きさに減ってしまったスライムに、再びユーナの火炎魔法を叩き込んで死滅させた二人は、丘の頂上を目指して歩みを進めていた。

サキ「あー……この遺跡、ていうか昔は施設だったんだけど、何の目的で作ったか分かったかも」
ユーナ「え?サキちゃんすごい」

 荷物と装備を取り戻して余裕が出てきたということもあって、サキが歩きながら唐突に雑談を始めた。

サキ「きっと、罪人や捕虜、奴隷とか孤児の“弱い”人たちを、無理矢理この施設に送り込むのね、で、「赤い石に触れると元の場所に帰れる」と伝える。そうすると、皆赤い石のある場所を目指すでしょ」
ユーナ「うんうん」
サキ「そのルートに魔物やトラップを配置しておく。そして挑戦者が負傷したり凌辱されて苦しみながら死んでゆく様子を、どこか他の場所で観賞するんだわ……ニヤニヤ笑いながら」
ユーナ「うわぁ、趣味悪っ!……でも、魔物に殺されるならともかく、性的な凌辱じゃ死なないと思うけど」
サキ「人によるんじゃないかしら?旧世代人の貞操観念なんて知らないけど、箱入りで育てられた良家のお嬢様とかだと、全裸でスライムに犯されるなんて耐えられないから……」
ユーナ「……自分で命を絶っちゃう。スタート地点の“くっ……殺せ”って、そういうこと……」
サキ「なーんか、遺跡に入ってからずっと行動を監視されて、エッチなイベントに誘導されてる気がするのよね」
ユーナ「もしかして……!私たちの裸とかアレとかも、全部誰かに見られてた!?」
サキ「や、それは無いんじゃない。もう遺跡になってるんだし、人間じゃなくて自動監視システムだと思うわ」

 雑談しながら歩いていると、頂上は目前となっていた。

サキ「もう少しで目的地だけど……絶対に何か仕掛けてくるわよ」
ユーナ「うぅぅ……このまま何事も無く終わって欲しいよぅ……」
サキ「十中八九それは無い。覚悟しといた方がいいわ」

 丘の頂上は開けた場所になっていて、そこには屋外ステージ……のようなものが設置されていた。そして、周囲に観客として集まっていたのは、大勢の「ヌケ・サーク」だった。

「ずいぶん遅かったですね。待ちかねました。さぁ少女たちよ!あのステージに上がるのです!」
「そして、エッチなパフォーマンスを披露するのです!」
「「さぁ!さぁ!さぁ!」」

 ヌケ・サークたちに、サキとユーナはステージに押し上げられる(どさくさに紛れてお尻やふとももを触られながら)。両サイドからスモーク代わりにピンクの霧がぶしゅーと噴き出し、観客は大いに盛り上がっているが……

サキ「……って言われてもねぇ。何したらいいのかさっぱり思いつかないわ」
ユーナ「そ、そうだよ!急にエッチなパフォーマンスなんて無理だよ!」

 ……いきなりそんなものを披露しろと言われて、演者の方はテンションダダ下がりである。

「何もしないと赤い石は出てこないですぞ(ぼそ)」
サキ「何ですって!?それを最初に言いなさいよ!」
ユーナ「あれ?サキちゃん、やる気になってる!?」
「まずその恰好がダメですね。ステージ袖でコレに着替えてください」

 ヌケ・サークが手にしていたのは、沼でロストしたはずの“あぶない水着”だった!

ユーナ「どうしてその水着がここに?!」
サキ「まぁ、確かにそれを着れば、どんなパフォーマンスでもエッチになるわね」

 やらないと赤い石が出現しないのなら仕方ない。二人は再び水着に着替えると、ステージに立った。

ユーナ「うぅ……またこれを着ることになるなんて……」
サキ「で?何をすればいいのかしら?」
「髪の長い娘の胸は素晴らしく豊かですね。よし!それを活かしてもらいましょう!」
「「おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!」」

 会場を揺らすような歓声に合わせて、床から一本の黒い棒が伸びてきた。

サキちゃんパイズリ(笑)
「さあ!その棒を胸の間に挟むのです!」
サキ「えぇ〜こんな太くて硬いの、挟めるかしら?」

 サキは水着の上の紐をほどいて胸を露出させ、棒を谷間に密着させると、両手で胸を寄せた。

サキ「う〜ん、さすがにこれが限界みたいね」
ユーナ「サキちゃん、そんな簡単にのせられちゃダメだよ!」
サキ「別に胸ぐらいいいんじゃない?……あら?下も脱げてる」
ユーナ「きゃぁぁぁぁ!」
「「おおおおおおおおおお!!!」」

 棒を挟もうと試行錯誤しているうちに、いつの間にか水着の下も脱げ落ちてしまっていた。ユーナの悲鳴が上がり、観客は大歓喜だ。

サキ「これで終わり、ってわけでもないんでしょ?次は何をすればいいの?」
「察しが良いですな。おっぱいで棒を挟んだまま、身体を上下させるのです!」
サキ「えぇ!?…………ん……んっ…………こんな感じ?」
「そうですそうです」「すばらしい」「どう見ても全裸パイ●リ」「妄想が捗りますな」
サキ「……で、これ、いつまで続ければいいのかしら?」
「ふぃにっしゅまでじゃ。盛大なふぃにっしゅまでじゃ!」
サキ「……はぁ??」

 棒は滑りやすいので胸が擦れて痛むことは無かったが、上下運動で足腰が疲れてくる。体力的にそろそろ止めたくなった時、急に棒がビクビクと振動しはじめた。

サキ「ちょ、ちょっと何!?……わっ!……ひゃっ!?」

ビュルッ!……ビュクビュクッ!

 次の瞬間、棒の先端からネバネバした白濁液が噴き出し、サキの顔と髪にかかる。

サキ「何これ、気持ち悪ぅ……」
「すばらしい!」「全裸パイ●リ→●射とは!」「なんと卑猥な!」「……ふぅ……」「うむ!合格じゃ!」
ユーナ「合格なのはよかったけど、サキちゃんの大事な何かが失われた気がするよ!?」

 ラフイラストに描けないようなひどい展開で、サキのパフォーマンスはウケたようだった。

「さて、隣の可愛い娘は……“おひらき”にチャレンジするのです!」
ユーナ「な、何それ!?すっごい悪い予感しかしないんだけど!!」
「な〜に簡単なことじゃ。ステージの一番前に座って、かぱーっと足を広げればエエ」
ユーナ「ええ〜〜っ!?この水着でそれは嫌〜〜っ!!」

 普通の服を着ていれば、足を開いて見せても大事には至らないのだが、ユーナが着ている水着は特に股間の部分が際どく、少しでもズレると見えてはいけない部分が露出してしまう。

サキ「……ユーナ、元の世界に戻るためよ。やるしかないわ!!!」
ユーナ「もぉぉ!サキちゃんまで〜〜〜!!……うぅ……分かったよぅ……」

ユーナちゃんの“おひらき”(笑)
 ユーナは舞台の最前にちょこんと座ると、ゆっくりと足を広げてゆく。
 そして、両足が大きく開いたその時、大勢のヌケ・サークが食い入るように注目している状況で、水着がパサリと脱げて股間が丸出しになった!

「「おおおおおおおおっ!!!」」

 とんでもない過激さに客席は大興奮。鼻血を出して倒れる者までいるほどだが、ユーナはあまりの恥ずかしさに目をつぶって顔を背けていて、自分がひどい痴態を晒していることに気づいていない。

ユーナ「サキちゃん!み、見えてないよね??」
サキ「え、ええ、隠れているわ!大丈夫よ!!」

 ……サキの目は、完全に泳いでいた。

「すばらしい!すばらしすぎる!」「これで思い残すことはない」「……ふぅ……」「最高じゃぁぁ!!」

 水着からアソコをチラ見せ……どころではないエッチすぎるパフォーマンスに、皆大いに満足した様子だ。

「「ではこれにて、お〜ひ〜ら〜き〜〜!!」」

 ヌケ・サーク達が一斉に声を上げると、舞台の中央にドスンと赤い石が落ちてきた。

サキ「今よ!ユーナ、早く!」
ユーナ「ふぇ?」

 二人分の荷物を抱きかかえたサキが舞台袖から飛び出し、全裸のユーナの手を掴んで立ち上がらせる。
 そのまま赤い石に触れて、淫靡なピンクの世界から脱出した。
 丘陵地の草原に戻って二人がまずしたのは、“服を着る”だったことは、言うまでもない…………。

ユーナ「はぁ〜〜〜最悪だよ〜〜〜すっごい恥ずかしいよ〜〜」

 帰宅してすぐにダイニングのテーブルに突っ伏して、ユーナが情けない声を上げる。

サキ「まぁ無事だったんだし別に問題ないんじゃない?あっちの世界の魔法生物に見られただけでしょ」
ユーナ「うぅ〜〜〜あんなひどい目に遭ったのに、お宝無しなんて、最悪だよ〜〜〜〜」
サキ「……そっちはちょっと問題ね」

 二人ともひどい痴態を晒したのだが、まぁネットに画像がアップされて拡散したのではないから、今後問題になることはないだろう。
 しかし、お金の方は……何とか手を打たないとシリーズ終了になりかねない、大問題なのだった。

おしまい

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